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出生地主義のカナダ・血縁主義の日本

出生地主義のカナダ・血縁主義の日本

先日は、多文化主義国家カナダ特有の問題について書きましたので、今回はなぜカナダが多文化主義を標榜するようになったのかと、今後の日本社会と多文化主義のかかわりについてまとめていきたいと思います。

カナダは国籍を与えるにあたり、「出生地主義」を採用しています。

カナダで生まれた子供は民族・人種関係なく全てカナダ国籍を得ることができます。

実際、私の友人もカナダで生まれたため20歳までカナダと日本、両方の国籍を持っていました。

一方、日本は「血縁主義」を採用しており、両親のどちらかが日本国籍を持っている子供ならば出生地に関係なく国籍を得ることができます。

この違いは、国の成り立ちと深い関わりがあります。

カナダのイメージと現実

カナダのイメージと現実

ご存知のとおり、カナダは移民によって作られた国です。

世界中から集まった人々で構成されている集団において、個人の帰属を規定するために重要となるのは、「どこで生まれたか」になります。

もし、民族・人種・血縁で規定してしまったら、集団としてまとまらず崩壊してしまうからです。

カナダの出生地主義は人道的観点からではなく、建国の歴史上の必然の産物なのです。

なぜ、わざわざこのように表現を使ったのかというと、カナダ全国民が異文化に寛容ではないということを明記したかったからです。

日本におけるカナダのイメージは、差別が少ない、多様性を尊重する、異文化との融和などといった良いものが多いと思います。

事実、トロントはカナダ経済の中心ということもあり様々な人種の人がともに生活しています。

異文化に対する反応はどの国でも人それぞれ

異文化に対する反応はどの国でも人それぞれ

しかしながら、人種・宗教差別はありますし、異文化に対する偏見もあります。

よく言われるのは、日本人は優しくて礼儀正しい、そして簡単に付き合えるというものです。

同じカナダ人でも、無理でも彼女たちとなら付き合えるかもと勘違いしたカナダ人男性による強引なナンパはよく聞きますし、実際に体験したこともあります。

また、最近では、黒人への差別に反対するデモがありましたし、ムスリムへの嫌がらせについては日に日に増えています。

私見としては、異文化の受け入れについて寛容なのは30%位で、60~70%のカナダ人は同種の人でまとまる傾向に思います。

その証拠に、トロントには中華街、韓国街、リトル・イタリー、リトル・ポルトガル等たくさんのエスニック・タウンがあります。

ただし、これについては人類全体として言えることではないかとも思います。

日本社会でも、積極的に海外に行く人もいますし、躊躇する人もいます。

在外日本人コミュニティにおいても、現地に溶け込もうとする人もいれば、日本人社会・文化と密接に繋がることを求める人もいます。

時折耳にする、「日本人は閉鎖的だ」というのはどの国民にも当てはまるということです。

つまり、現代において、日本が変わらなければいけないのは心理的な部分ではなく、社会制度の方ではないかと思うのです。

カナダと日本で決定的に違うことは、異なる文化的背景の人と暮らすことに慣れているかそうでないかということです。

カナダでは、学校で白人の子と黒人の子が隣同士になることは普通の光景ですし、同僚がターバンを巻いていることも珍しくありません。

多様な考えがあることに対する認知、外見によって奇異の目を向けられることの少なさ、宗教を配慮したサービスの浸透については、カナダは優れています。

少子高齢化社会の日本において、今後数十年の内に労働者不足となることは確実です。

そのときは、建国当初のカナダ同様、他国から人を受け入れなければならなくなると推測されます。

そのことは周知の事実であり、多文化主義社会の重要性は多くの人が感じており、それを目指しての取り組みも沢山ありまます。

単文化社会が多文化の国に学びたいもの

単文化社会が多文化の国に学びたいもの

しかしながら、現実は目標からは程遠いものです。

私の故郷では、20年前に自動車工場の労働者不足解消として南米から多数の日系人を受け入れました。

彼らは現在、様々な問題を抱えています。例えば、母語も日本語も不十分のために仕事につけない2世代、そこから生まれる彼らへの偏見、保険に加入できないために病院へいけないなどがあります。

これは、当初、労働者受け入れ側双方が、短期の出稼ぎという認識でいたためによる受け入れ側の制度が未整備のためによるものが大きいです。

多文化主義社会への実現に向けた活動というと啓蒙が中心となりがちですが、まずは行政など諸々のシステム改善の面から取り組むことが結果的に目標達成への近道なのではないでしょうか。

もちろん、カナダも様々な問題を抱えていますが、ある程度制度を整えてあるからこそ移民の積極的受け入れが可能になったのだと思います。

国家が単独で存在できない今、カナダの制度に学ぶものは多いと感じます。

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