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バリとジャワで異なるガムラン演奏

ガムラン演奏

「ガムランはね、このような青々と実った稲穂を見ながら木陰でのんびりと演奏するものなのですよ。」

赴任していたジャカルタの会社のインドネシア人マネージャーが、工場の前一面に広がる水田を見ながらこう私に教えてくれました。

インドネシアは日本と同じ稲作の国です。
稲が畑一面たわわに実っている風景は私たち日本人の心にも安らぎを与えてくれます。

ガムランはジャワ島やバリ島の伝統音楽を奏でるインドネシア独特の楽器です。
主に青銅でできた鉄琴に似たものや鍋をひっくり返した楽器が横に並んだもの、それに銅鑼、太鼓、笛、弦楽器、木琴などが加わって、トリオやカルテットなど小人数で演奏したりちょっとしたオーケストラで演奏したりします。

踊りや歌が加わることや、またワヤンと呼ばれる影絵芝居・人形劇などの楽隊にもなり、その荘厳な響きのパフォーマンスはエスニックな雰囲気を醸し出し、癒しの世界に導いてくれます。

観光地のバリ島のガムランは有名で、バリに行かれる方はたいてい見聞きする機会がありますし、日本で公演会があったりマスコミに紹介されたりということもしばしば。

私の独断で申しますと、バリのガムランは総じてにぎやかなポップスのように聞こえるのに対し、古都ジョグジャカルタやソロのある中部ジャワの王宮のガムランは、クラッシック音楽で荘厳かつ優雅な雰囲気があります。

そして、首都ジャカルタのある西ジャワのものはいわばジャズのように柔軟性があって、庶民の泥臭い匂いを感じるのです。

演奏と同様に踊りの方にもそれぞれ特徴があり、バリの踊りは躍動的で華やか。

中部ジャワの舞踊は日本の能楽を思わせるような厳かでゆっくりとした感じ。

西ジャワのものは素朴で親近感があります。

後世に継ぐ宗教文化と芸能

後世に継ぐ宗教文化と芸能

中世にジャワを中心に栄えた王朝はイスラム教を信奉していましたが、それより前にあったヒンドゥー教の文化を宮廷芸能などで残し、有名な叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」などが舞台芸能やワヤンの演目で伝承され保存されています。

イスラム教は偶像崇拝を禁じていますので、イスラム教が広まった地域では元からある異教の文化が滅んで亡くなってしまうことが多いです。

しかし、インドネシアは例外でこのようにヒンドゥーの文化・芸能を継承するのは、インドネシア人の許容性・柔軟性に富んでいるところと言ってよいでしょう。

ドゥクンの占い

ドゥクンの占い

そうは言っても限度を超えて、古くからある土俗の信仰でドゥクン(祈祷士)に占いをしてもらったりブラックマジックで人に呪いをかけたりするところは、常軌を逸していると思わざるを得ない面があります。

インドネシアの取引先の会社社長が日本に出張するにあたり、そのドゥクンに占いをしてもらった時のことです。

当初計画していた日程では日本の方角に運勢が凶と出たので、スケジュールを1か月遅らせると出張の直前に言ってきたときには、準備を始めていた日本側の関係者一同呆れました。

ところが、何とその社長が当初来る予定だった週に、福岡空港でインドネシアのフラッグキャリアであるガルーダインドネシア航空のジェット機が、うまく離陸できずに滑走路をオーバーランした事故が実際に起きてしまったのです。

この時、ドゥクンのご神託を思い出した日本側関係者一同はたまげてしまいました。

このように、実際に財界人ばかりでなく政治家にもお抱えのドゥグンがいたりするというのですから、これも結構奥が深いようです。