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海外で道場入門

海外で道場入門

海外に住んでいた小学生の頃、初めて私は武道に出会いました。

その後、海外から日本への引っ越しとともにすっかり武道と縁のない生活をずっと続いていたのですが、日本で外資系の会社員をしていた時に、また何か武道をやりたいと思い始めていました。

当時のフランス人の上司が剣道を習っていたことも、影響していたのかもしれないです。

一足先に合気道を始めた同僚が、私の家の近所にある合気道の道場をネットで探してくれて、そこを見学後、すぐに入門することに。

その道場で稽古を続けて黒帯をとった後、しばらくして、もっと自分が求めている合気道がないかと探して、都内の別の道場に所属を変えることにしました。

仕事との両立に悩みながらも、合気道を細く長く続けることを目標に続けてきました。

スイスに引っ越し…どこで稽古をするか?

スイスに引っ越し…どこで稽古をするか?

スイスのルツェルンに引っ越すことになって真っ先に心配したのが、これから今まで日本で続けてきた合気道の稽古をどうするか?という点でした。

日本の出身元の道場のつながりで、チューリッヒに合気道の道場があることが分かったので、すぐにお試しで稽古に行ってきました。

Googleの地図を片手に、ようやくたどり着いた道場は動物園のそばで、緑が多く、気持ちの良い場所にあります。

また、更衣室もきれいでとても使いやすく、道場の窓も大きく、畳も日本と同じような感じでした。

少し日本語が話せるドイツ出身の女性が合気道を初心者に教えていて、その教習時間に参加することに。

彼女は一つ一つ丁寧に教えていて、みなさん初心者ながら、しっかりと真面目に稽古されていました。

そんな彼女からルツェルンにも合気道の道場があると教えてもらい、早速ネットで検索し、見学に行きました。

「合気道ルツェルン」へ

「合気道ルツェルン」へ

駅の近くにある道場は清潔で、チューリッヒの道場と同じくらいあり「合気道ルツェルン」と日本語で書かれた木の看板がかけられています。

初心者の稽古の指導を終えたGさんが相手をしてくれました。

彼は合気道歴40年以上で日本にも何度も行ったことがあり、趣味は日本語の勉強、書道と日本料理を作ることだそうです。

「スイス(ヨーロッパ)の道場は日本のような厳しい感じがほとんどなく、稽古人同士が色々しゃべりながら稽古するので、とてもうるさいでしょ?」と語ります。

彼によると、ヨーロッパで日本のように厳しくすると辞めてしまう人が多いので、日本と同じように指導するのは難しいとのこと。

とはいえ、最初と最後の拝礼は日本語で「お願いします」で始まり「ありがとうございました」で終るのは日本と同じ。

合気道はいくつかの異なる流派があり、スイスでもいくつかのグループに分かれているようです。

日本である程度経験がある私も、ここスイスの道場はまた違うやり方なので、先生や先輩方に色々教えてもらっています。

言語の問題について

スイスドイツ語について

話は変わって、言語の問題について。

ルツェルンなどスイスのドイツ語圏で話されるスイスドイツ語は、ドイツ語が母国語の人にも非常にわかりにくいことで有名です。

日本で標準ドイツ語を習っていたのに、ここのドイツ語は全く分からない。

はじめ道場の人たちは気を使って、先生も私のために英語で指導してくださり、稽古人の方たちも英語であれこれと話してくれました。

しばらく稽古しているうちに、先生も気を使わなくなってか、スイスドイツ語で教えるようになると、動きを見ながら説明を聞いているうちに段々とパターンが分かってきて、少しずつわかるようになってきました。

稽古の後、道場のみんなと近くに飲みに行くことが習慣になってくると、みんな英語の使用頻度が下がってきて(内心標準ドイツ語を話してほしいと思いつつも)、慣れてきたスイスドイツ語で会話をするようになり、気を使わずに話したいことを話すようになってきた気がします。

道場で出会うスイス人は、日本に行ったことがあったり、日本語もほとんどできずに内弟子をしたことがある人・日本文化に興味がある人が多いということもあって、他で知り合うスイス人よりも親和性があるように思えます。

スイスは多言語国でドイツ語圏のルツェルンでもフランス語は学校で習うそうですが、英語ほど得意でない人がほとんどのようです。

なので、道場でフランス語が話せるのはジュネーブ出身のたった一人だけです。

稽古を通じて様々な経験ができる

海外の道場を通じて得られる様々な経験

日本の道場のつながりがあったお陰で、これまでの半年間でジュネーブ、パリ、フランクフルト、プラハでの稽古に参加することができました。

驚いたことは、ヨーロッパでは「日本(もしくは他の国の)先生が某所で講習会をする」と知ると、車や電車で10時間以上かけたり、飛行機を使ってまで講習会に参加する人が多くいることです。

日本でも合同稽古や合宿などはありますが、ヨーロッパの場合、国をまたいでそれを行うようです。

そこでまた新しい繋がりができて、稽古や技の工夫について情報交換したり、出稽古を計画するなど、その後にも役に立ったりしています。

パリやフランクフルトなど日本人が多いところでは、道場を通して日本人と知り合うことは比較的簡単ですが、スイスの場合なぜか殆ど道場で日本人に知り合うことがあまりないです。

私の通っているルツェルンの道場には、日本で稽古経験がある白帯の日本人の方がいます。

2年前から道場に通っているその彼からも、道場で日本人に会うのは私が初めてといわれました。

彼に限らず、フランクフルトの講習会で知りあった日本人女性とも技の違いなどの問題を共有できたりするので、日本で稽古経験のある人との繋がりもとても貴重だと思っています。

武道をヨーロッパで続けるのは日本と同じ環境でないため、優れた指導者に中々出会えなかったり、技に対する考え方が異なる等で悩むことも多いです。

ですが、それでも技の上手下手にかかわらず日本人として尊敬をもって接してもらえるし、地元の言語習得の実地訓練にも適しているので、海外での武道の稽古はお勧めです。

(参考)
ルツェルンの合気道道場のウェブサイトは下記の通り
http://www.aikido-luzern.ch/

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