ヨーロッパの難民問題とドイツ語講座のボランティア
10年ほど前から、スイス最大の移民・難民救援組織であるカリタス・チューリッヒ州支部では、安価で誰にでも受講できるドイツ語授業をはじめました。
わたしもそこでボランティアで初級ドイツ語講座を担当するようになり、4年目になります。講座には毎回世界各地様々な国からの人が訪れ、これまで に教えた生徒さんたちの出身国を数えてみると30カ国以上になりますが、この9月からまた新しい国からの生徒さんが加わりました。
出身国はエリトリア。今ヨーロッパ中で連日話題になっている、シリアとならんでたくさんの難民がヨーロッパにきているエリトリアの方です。
やっと暫時滞在許可を得て、難民申請できる国にたどりつけたことが、この方にとってどんなにすごいことで、運命をかえることになったことかと想像します。
自分でもそのつかみとったチャンスへの喜びがとてつなく大きいのでしょう、スイスに来てまだ1ヶ月しかたっていないというのに、自力でこれまで勉強したのか、今日のはじめての授業でも、すでにドイツ語の基本的なことがかなりわかっていて、同じクラスのほかの人よりよくできるほどで、とても感心しました。
今、ヨーロッパは揺れています。
受け入れにこれまで寛容な姿勢をとってきたドイツやス ウェーデンだけのわずかな国だけで押し寄せる難民を受け入れるには限界があるのは明らかですが、かといってヨーロッパ内で難民受け入れへの連帯的な姿勢にはいたっていません。
難民問題は単なる受け入れうんぬんだけでなく、受け入れ国の社会システムや心の準備も非常に大切な問題だと思います。
だから急激な大量の受け入れに慎重に各国がなることは一方でよく理解できるのですが、それとは別の次元で、わたしは語学学習の場を通じて、難民としてやってきた方を生徒として迎え、ドイツ語習得という共通の目標のために時間を共有していくと、心のなかから親近感や共感や信頼の感情が自然に湧き上がってきます。
また私も滞在許可なしにはこの国にいられない外国人の一人として、難民の方たちに少しでも役に立つドイツ語学習の場と、くつろげる時間をできる限り提供できればと思います。
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