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観光ガイド本に載っていないスイスの隠れた遺跡を探す旅

ドルメン

スイスといえば、チョコレート、チーズ、時計、それにアルプスなどが思い浮かぶかと思います。今回は、普通の観光ガイド本に載っていないスイスの隠れた遺跡について紹介したいと思います。

それは、巨石の遺跡です。巨石といえばイギリスのストーンヘンジやフランスのカルナック列石などは非常に有名ですが、それに比べて有名ではないけれども、スイスにも巨石があるのです。

首都ベルンから車でおよそ40分ぐらいに位置するソロトゥルン市の近くにオバービップ(Oberbipp)という小さい村があり、そこの教会にはドルメン[https://de.wikipedia.org/wiki/Dolmen_von_Oberbipp]といわれる遺跡があります。実はこのドルメンが発見された場所が畑の中で、邪魔なので教会の敷地内に移動されたそうです。

2014年の10月には教会の女性の牧師さんが発見した少年を中心としたお祭りを行っていました。

発見した少年を中心としたお祭り

スイスには、巨石を研究するアマチュアのグループがあり、巨石の調査・保護などの活動をしています。アマチュアのなかで、ベンヤミン・フェスラ―さん(Dr. Benjamin Fässler、医学博士、通称ベニ)は心臓外科医を定年退職して、宗教、心理学、歴史、考古学など様々な分野を勉強しているうちに、先史時代の遺跡に興味を持ち、自分の住んでいるソロトゥルンにある巨石について調べはじめたそうです。

ソロトゥルン周辺には、先述のドルメンだけでなく多くの巨石があり、ベニさんはSolothuner Stein Museum(ソロトゥルン石博物館)と協力して「巨石の道」[http://www.solothurn-city.ch/de/aktiv/wanderland/solothurner-megalithweg.6905.html](Solothuner Megalitghweg)を作ったそうです。場所はヴァルデック城(Schloss Waldegg)から少し奥の森の中。ハイキングコースとして森の中を歩きながら様々な巨石を見て回ることができるのは結構ワクワクします。

ハイキングコースとして森の中を歩きながら様々な巨石を見て回ることができるのは結構ワクワクします。

中には”Cupmark stone”と英語で言われる窪みがある石(独語でSchalen Stein)も見つかっています。

ベニさんははこれらの巨石は先史時代の人々の宗教のために使われたのではないかと推測しています。またドイツの考古学者のシュテファン・メーダさん(Dr.Stefan Mäder)[https://kokugakuin.academia.edu/StefanMaeder ; http://www.schwertbruecken.de/japan/startj.htm]はこの巨石にある窪みは北斗七星などの星座、並びに北極星などを示しているのではないかと考えています。

「巨石の道」のやや外側の森のはずれに別の面白い石があります。子宝に恵まれない女性がその石から滑り降りると子供を授かることができるという言い伝えがある石で、石の表面がツルツルしているので多くの人が滑ったたことが伺われます。こうした石はスイスだけでなくてドイツ南部、フランス、オーストリアでもあるそうです。

子宝に恵まれない女性がその石から滑り降りると子供を授かることができるという言い伝えがある石

スイスの南部ヴァリス州のアニヴィエの谷(Val d’Anniviers)という谷あいに昔ながらの家々が残っている地域があります。

スイスの南部ヴァリス州

そこの谷間のグリメンツ(Grimenz)という場所にも窪みのある巨石の遺跡がひっそりとハイキングコースの傍らにあります。人の足跡の形のようなものから、数々の小さな窪みがまとまって何かの模様のように見えるものまで。足跡の位置は北側に向かっているのです。

グリメンツ(Grimenz)

北斗七星の形をした窪みも見えます。

北斗七星の形をした窪み

また、スイス南東部クール(Chur)に近いシルス(Sils)にも不思議な巨石があります。こちらは芸術的な絵のようにみえる模様があります。これも北斗七星のように見えます。

スイス南東部クール(Chur)に近いシルス(Sils)

これらの巨石にある模様が星座に関係すると考えるメーダさんは「日本の岐阜の飛騨金山にも同じような巨石がある。」と教えてくれました。

ストーンヘンジやカルナックなどは平らな土地に巨石がありますが、飛騨金山の金山巨石群はスイスと同じく山間に巨石があります。地元のアマチュアの方が中心となって立ち上げた「金山巨石群調査資料室」[ http://www.seiryu.ne.jp/~kankou-kanayama/kyoseki/index2.html]の調査によれば、ストーンヘンジのように太陽の動きから暦を作り上げていたことが分かってきたそうです。

日本とスイス、遠く離れているけれども、古代の謎を紐解くためにアマチュアの方々がコツコツと粘り強く調査を続けている姿は全く変わらないなと感じました。

そして何より、古代の人々も場所や時代は違っても同じように空を眺めて、暦やおそらく宗教的な目的に巨石を利用していたと聞いて、パソコンやGPSなど現代のような便利な道具がない時代に世界の色々なところで同じような遺跡がみられるのは決して偶然ではないように思えてきました。

今後、研究が進んでより多くのことが明らかになることを期待しながら、まだまだ沢山あるスイスの遺跡を見に行こうと思っています。

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