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スイス老人ホームのドイツ語会話サロン

スイス老人ホームのドイツ語会話サロン

最近、相次いでスイスの老人ホームの素敵な話を耳にしました。

いくつかのスイスの老人ホームで、外国から来ている留学生や、ボランティアをしにホームへ来る外国人を対象に、ホーム居住者たち自らが定期的にドイツ語を教えたり、会話の練習をするサロンを開いているというのです。

世界各国から多くの留学生を抱えるチューリッヒの大学と老人ホームが共同で始めた老人ホームでのドイツ語会話サロンは、すでに12年も続いており、毎回30人ほどが参加しているとのこと。

サロンに集う人たちは、国籍も多様なら、20歳から100歳までと世代も様々。

国籍も世代もこんなにバラエティー豊かな会合は、世界でもあまり見られないのではないかと思われるほどです。

居住者自身が行うボランティア

居住者自身が行うボランティア

ホームに居住されている方々の中で、ただ介護やサービスを受けながら自分が快適に毎日を過ごすことだけでなく、できることなら、誰かに何かをしてあげたいという気持ちを持っている人は、決して少なくないのではないでしょうか。

ただ、限られた自身の健康や体力、また物理的な条件で、実際に具体的にできることを見つけることは簡単ではなく、あきらめざるを得ないようなケースも多いのが実情だと思います。

しかし今回のケースでは、体が不自由だったり、手先が少々不器用になっても、自分の母国語でコミュニケーションするということで、誰かの役に立つ課題をこなすことができます。

普段はホームのスタッフやボランティアのサービス受ける側のホーム居住者たちが、逆にここではボランティアをする側のポジションです。

一方、外国人の方たちも、老人が毎回授業の日を楽しみに待ってくれていて、授業中も嬉しそうに教えてくれる姿を見れば、単に言葉を習うだけでなく、ホームの老人に良いこともしているのだ、というプラスアルファーの充実感があることでしょう。

老人と外国人両者が得をする、抜群のマッチングです。

自分にできる形で、誰かの役に立つようなことをする、という今回のケースは、ボランティアの一つの理想形のように思います。

どこからどこまでがボランティアで、どこからが自分の楽しみか、とすっぱりと切れる切れ目などなくて、改まってそれをボランティアなどと命名する必要も気負いもなく、自分にできる範囲でやる行為や善意は受ける側も、あまり恐縮せずに安心して受け入れられるでしょう。

よく考えれば、普通の人間関係と全く同じですね。

何はともあれ、これからも老人ホームに居住する方にとって、社会につながる色々な新しいアイデアや仕掛けがどんどんできて、サービスを受けるだけの身ではなく、主体的な自分を自覚できる人や時間が、少しでも多くなってほしいなと思います。

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TOMOMI HOTAKA
2006年からスイス在住。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。元学術振興会特別研究員。 現在、地域の異文化・異世代間交流、教育、ソシアル・ゲイミフィケー ショ ンなどの分野で、ライター、リサー チャー、翻訳、通訳、語学指導員(ドイツ語・ 日本語)として従事。仕事とボラ ン ティアと二人の子育てを組み合わせたモジュール型ワーキングを実践中。