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人気寿司店「すし堺」がドイツに海外1号店をオープン~どうやって海外進出を成功させたのか?~

人気寿司店がドイツに海外1号店をオープン~どうやって海外進出を成功させたのか?~

ただ、ひと口に海外で働くといっても、日本から海外の支店に出向する、海外の企業に入るなど、様々な道がありますが、中でも自分のお店を開くというのは、ことさら相当の覚悟と度胸、労力が必要なのではないでしょうか。

大宮の食通たちの舌をうならせる江戸前寿司の名店「すし堺」を営む堺博さんは、2018年8月28日、ドイツ・フランクフルトに待望の海外1号店「THE SAKAI」をオープンさせました。小学生の時、幼馴染の親父さんに憧れて寿司職人を目指した頃から、海外で自分の店を持つという夢を持っていた堺さんは、好調な国内店舗をそのままに、それと平行してどうやって海外進出を成功させたのでしょう?

自分を走らせたきっかけは病気から

自分を走らせたきっかけは病気から

北海道出身の堺さんは、高校を卒業してすぐに上京。銀座の寿司店で厳しい修行を積み、34歳の時、縁のあった埼玉・大宮に、自身の店「すし堺」をオープン。2号店に続き、寿司ならではの新鮮魚介を使ったイタリアンレストランを開き、さらにホテルや大企業のパーティーのケータリングサービスなど事業を拡大していきました。

順風満帆でしたが、37歳のとき、まさかの大病が堺さんを襲い掛かりました。手術・リハビリで体が辛いながらも、気になるのはお店のこと。しかし堺さん不在の2ヶ月間、スタッフが一丸となり店を守り、無事お店に戻った堺さんは「自分の戻る場所があることの嬉しさ」を噛みしめるとともに、これまで休みもとらず自身で何でも行ってきたけれど、スタッフに任せることの大切さも実感。

きちんと自身も休みをとり、スタッフに店を任せ、その間、自身は他店でよその味を探求したり、海外に視察に行ったりと見聞を広められるようになったのだとか。そして何より、死と向き合ったことで、健康の大切さに気づき、やりたいことをやっておこうと、夢であったヨーロッパ進出に向けて一気に加速しました。

決意から海外出店までの道のり

決意から海外出店までの道のり

出店の地に選んだのは、ヨーロッパの経済を牽引し、生活基盤もしっかりしているドイツ。「まず行ってみないことには始まらないので、通訳と一緒に、デュッセルドルフ、ミュンヘンなどドイツ各地の飲食店をさんざん歩き回った」という堺さん。

また、そのほかに、海外出店の一般的なステップではないけれど、「埼玉県中小企業若手社員海外研修制度」(現在同制度は終了)を利用して、従業員をドイツに派遣。海外でお店を出すにあたっての調査や、現地の寿司屋で実際に働くなど、足場を固めました。

「大変だったのは物件探し。ほぼ本決まりの物件が流れたこと幾度、半ばあきらめた時に、今の物件と出会い契約できた」そうですが、ドイツらしく内装工事が遅々として進まなかったり、細かなトラブルもありながら、実際動きだして約3年で開店に至りました。

「THE SAKAI」で伝えたい日本の食

「THE SAKAI」で伝えたい日本の食

フランクフルトには、日本人経営の寿司屋のほか、外国人が営む”なんちゃって寿司屋”もあり、寿司の認知度が高いのはもちろん、寿司が好きなドイツ人もたくさん! ただ、寿司以外の日本の料理…というと、まだそれほど浸透していないのが現状です。

本物の和食を食べたいけど、寿司以外何を食べていいのかわからない。そんな外国人にもフォーカスを当てたのが、「THE SAKAI」。

堺さんの技が結集した日本料理が、前菜からお寿司、デザートまでコース仕立てで供されます。

「提供時に、料理の内容、食べ方などを説明するとともに、日本ではこの時期になぜこれを食べるのか等、日本の食文化も紹介できたら」と堺さん。美味しいシャリ、和食のすべての基になる出汁のためにこだわったのが水。ドイツの硬水を超軟水にする高性能浄水器を日本から導入し、和食本来の繊細な味わいを守りながらも、ドイツの野菜・食材を用いたり、ヨーロッパ風のアレンジを施したりと、柔軟な発想で新たな料理が生み出されています。

また、お酒と料理の”ペアリング”も特徴的。お品書きの一品ごとに、相性のよい日本酒やワインが記されていて、ドイツ未上陸だったフルーティーな日本酒やソムリエセレクトのワインが、さらに料理の美味しさを引き立てます。

ドイツ語ゼロでドイツ生活スタート

ドイツ語ゼロでドイツ生活スタート

堺さんがドイツに移り住んだのは、今年の7月。「ドイツ語はこっちに来てから始めました。お店オープンで休んだりもしてるので勉強期間はまだ2ヶ月くらい。英語も喋れないです。45年日本にいて話せるわけないじゃないですか! 島国、日本で(笑)」と豪快に笑う堺さん。言葉はまだ勉強中だそうですが、この屈託のない明るさが周囲の人々を惹きつけます。

しかもお店オープンまもなく、五つ星の古城ホテル”Schlosshotel Münchhausen”のスターシェフが企画する、毎年恒例のグルメイベントに、初の日本人シェフとして堺さんが参加。寿司をふるまい、ゲストのみならず他のシェフにまで絶賛を浴びました。堺さんの明るさと、この行動力! もちろん言葉は大切ですが、目標さえしっかりしていれば、いくらでもほかでカバーできるのかもしれません。

海外進出を果たし、次なる夢は?

海外進出を果たし、次なる夢は?

9月4日には、堺さんプロデュースの「Sushi Cafe SAKURA」が、同じくフランクフルトに開店しました。特別な日に大切な人とゆったり食事を楽しめるのが「THE SAKAI」なら、こちらは、カジュアルにロール寿司やベジフードを味わえるお店。堺さんが育てた若手たちが切り盛りしています。

日本からドイツに移り住む際、お店で着ていた大事な着物を一番弟子に譲り渡した堺さん。一番弟子は、着物とともに堺さんの意志も受け継ぎ「すし堺」を見事に取り仕切っています。

このように国内店舗も好調のまま、海外では連続2店舗オープンという華々しいデビューを飾り、夢のゴールを切ったかのように見えますが、堺さんは「大風呂敷広げると「THE SAKAI」で星がとりたい。フランクフルトで星付きの日本食レストランはまだないですから」と目を輝かせます。堺さんの夢はどんどん続いていく。

【DATA】
●THE SAKAI
Address:Hedderichstr.69 60596 Frankfurt
Telefon:+49 69 89990330
https://www.the-sakai.com

●Sushi Cafe SAKURA
Address:Börsenstr.17 60313 Frankfurt
Telefon:+49 69 27272226
https://www.sakura-sushishop.com

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OKOSHI RIE
ドイツ生まれの日本人夫にくっついてドイツへ移住したが、何年住んでもドイツ語初級なフリーライター。現地コーディネーターも行う江藤有香子と“Team R fut. Y”を結成し、日々あちこち奔走。リトルプレス『点線面』内の「どきどきドイツ暮らし」などで、生活に密着した現地ネタを届ける。自身が所属する「POMP LAB.」サイト内では、フランクフルトブログも公開中。