多文化主義の国・カナダ
最近では、シリア難民の積極的受け入れで注目を集めているカナダ。
1971年に多文化主義政策を掲げてから、民族や人種の多様性を尊重し、すべての人が平等に社会参加できるような国づくりに勤めています。
例えば、白人絶対主義で悪名高いKKK(Ku Klux Klan)は、カナダでは違法な集団になります。
彼らの主張が人種差別的で、多文化主義に抵触するからです。
反対に、同じ多文化国家アメリカでは合法です。
アメリカでは、主義主張をもつ自由、結社の自由を尊重しているためです。
アメリカでは自由が一番大切なものに対して、カナダにおいては「多文化主義」が何よりも優先される価値観なのです。
教育と宗教の対立
徹底した多文化主義政策を行い、多様性を大事にしてきたカナダですが、それが原因で様々な問題を抱えております。
その一つが教育と宗教の対立です。
トロントがあるオンタリオ州では、昨年から小学校における性教育のカリキュラムが大幅に変更されることになりました。
オンタリオ州のものは1998年から変更されておらず、現状に即した内容に改定されることになりました。
子供たちは、同性愛者や性同一性障害、コンドームの使い方などの性行為の詳細、インターネット上へ自身の性的な写真を投稿することの危険性など、より現実的で実践的な授業を受けることになります。
この目的は、同性愛者や彼らを両親とする子供への正しい理解(カナダでは同性愛者が養子を取ることが可能であり普及しています。)、正しい性行為の知識を持つことにより望まない妊娠を防止する、SNSを利用した犯罪に巻き込まれないようにする、性行為に対して前向きなイメージを持ってもらうなどがあります。
個人的には、現代社会や情報工学、技術・家庭といった実学は常に最新の状態に更新されるべきであり、今回の改訂は生徒たちの役に立つ内容だと好意的に解釈しました。
しかしながら、敬虔なキリスト、ユダヤ、イスラム教徒の中には、自身の子供が学校で詳細な性行為の内容や同性愛について、学ぶことを拒否する人が少なからずいます。
授業の内容が彼らの教義に反するためです。
例えば、キリスト教では同性愛は認められていませんが、学校では彼らの存在を肯定し認めるように教えられます。
中には、公立の学校から宗教法人が経営する私立の学校に子供を転校させる保護者もいました。
問題の行方
「性的指向の多様性」と「信仰の多様性」。
二つの相反する、しかし重要さでは同じ比重の価値観がぶつかった場合、どうすればいいのか。
「お上の言うことを聞け。」と一方的に政府の考えを押し付けたら、主政策に反してしまう。
かといって、信仰の自由をとったら、国民の一部を切り捨てる事になる。
国のアイデンティティーを揺るがす大きな問題です。
お互いの考えを尊重しようとすることは、西洋絶対主義の反省から生まれた思想です。
世界には様々な形の文化・社会があり、それらはその土地に合わせて形成されてきたものであり、優劣が付けられるものではないということです。
共通の考えをもつ集団が、それぞれ個々に存在し関係をもっている場合において、この考えは機能すると思います。
しかしながら、一つの集団に異なる考えをもつグループが複数いる場合、これだけでは不十分ではないかと思うのです。
なぜなら、「他人は他人。自分は自分」という考えが基盤にあるからです。
自分のアイデンティティーを脅かす他者が隣人になったときどうするのか。
カナダの多文化主義は新しいステージに移ろうとしているのだと感じました。
それと同時に、このようなテーマが話題にも登らない日本社会は21世紀になった今でも、根本的には非寛容な社会なのだと感じました。
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