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小学校で行われた世界体験

小学校で行われた世界体験

外国に住んでみて体験することは、国や文化によって非常に多種多様で違いがあると思いますが、海外在住の日本人が共通して体験するものも、いくつかあるのではないかと思います。

その一つが、日本の文化や言葉について、聞かれたり教えたりすることでしょう。

いつも同じようなことを聞かれてうんざりする、という人も中にはいるのかもしれませんが、私は日本に興味をもってくれて嬉しいな、といつも単純に嬉しくなってしまいます。

少し前に、あるスイスの小学校で1週間、「世界旅行」という全校生のプロジェクトがありました。

それぞれの教室がその一週間だけは、世界のいろいろな国となって、子供達は毎日その中の一カ国を訪問し、そこの風習や伝統を体験したり、言葉や文化を学ぶというとても素敵な企画です。

日本担当の先生に声をかけていただいた私も、そこで「日本」の案内をすることになりました。

毎日1年生から6年生までの20人ほどの生徒たちが「日本」に入国し、おじぎ付きのあいさつや箸の使い方など習慣の違いを習ったあとは、グループに分かれて細かく切った果物などを取る競争をしたり、漢字の部首の意味を覚えてもらって組み合わせでどんな意味になるのかをクイズにして答えたもらったり、また民話や本の朗読や習字・武道体験等々。

一日中盛りだくさんの日本体験です。

スイス男子から感じた誇るべき日本文化

スイス男子から感じた誇るべき日本文化

外国の小学生に母国を紹介できたことは、私にとって忘れられない素敵な体験となりましたが、予想外で嬉しかったこともありました。

それは、男の子たちがとりわけ積極的に参加してくれたことです。

スイスではほかの欧米諸国同様、ここ数年、男子が女子に比べて概して、授業に積極的に参加せず、成績も悪く、高等教育へ進む比率が少なくなる傾向が顕著になっており、どうやったら男子に勉強のやる気をもたせられるのかが議論になっています。

(これについてはまた別のところで取り上げたいと思います。)

日本についてこんなことも知っている、あんなことも知っている、と聞いていないのにどんどん話す子も、あらかじめ大使館から借りて用意してあった着物に気づくと授業中に着ているのも、和傘をさしている子たちも、授業が終わって休み時間に入っても、習ったばかりの漢字の部首についてさらに聞いてくる子も、また竹細工の茶道具が「自然からすべて作られていてすごい」なんて渋いことをいって、休み時間中ずっと鑑賞している子もみんな男の子でした。

ワンピースのファンで日本のマンガにはすごいインスピレーションを感じるんだ、といって自作のイラストをみせてくれた子も、もちろん男の子です。

マンガのキャラクターやゲームに親しんでいるデジタル最少年世代にとって、日本という国は、外国の中でも特に親しみを感じる国なのかもしれません。

けれど、子供達は(ひとつの国だけに子供が偏って行ってしまわないように)訪問国を自分で選べず、先生が事前に割り振った国に行かなくてはならなかったので、もともとの日本好きが集まった というわけではありませんし、 伝統文化や風習などのテーマでも、男子が女子に負けずに積極的に学校で発言する光景をみられたのは、嬉しい驚きでした。

と同時に、竹細工が気に入る子がいるかと思うと、漢字の部首が気になる子がいるなど、 ずいぶん反応が違うのも、子供らしい素直な感性が光っていて面白いな、と思いました。

最後に、このような日本紹介の体験の後でしみじみ感じること。

これもまた、海外在住の日本人たちの共通する感慨なのかもしれません。

それは、日本が独創的で豊かな文化をもっていることへの感心や、またそういう祖国から来たことへのちょっと誇らしい気持ちです。

私の場合は、さらに日本に住んでいる人にも、ぜひ嬉しかった日本にまつわる体験を伝えたい、という気持ちになったので、報告させていただきました。

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TOMOMI HOTAKA
2006年からスイス在住。学習院大学人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。元学術振興会特別研究員。 現在、地域の異文化・異世代間交流、教育、ソシアル・ゲイミフィケー ショ ンなどの分野で、ライター、リサー チャー、翻訳、通訳、語学指導員(ドイツ語・ 日本語)として従事。仕事とボラ ン ティアと二人の子育てを組み合わせたモジュール型ワーキングを実践中。