フランスのイベント『マルディ・グラ』
2月のイベントといえば、14日のバレンタイン。
私が住んでいるフランスでも、恋人同士でプレゼントを贈り合ったり、レストランで食事をしたりと、密かな盛り上がりを見せます。
でも、もう一つ、春の訪れを祝う素敵なイベントがあることをご存知ですか?
それは『マルディ・グラ』(フランス語:Mardi Gras)。
日本語だとよく「謝肉の火曜日」と訳されます。
フランスでは2月の始めになるともっぱらクレープやワッフルと言ったような甘いお菓子を食べるという習慣がありますが、これはこの『マルディ・グラ』から来ています。
なぜこの時期にわざわざ甘いものを食べるのか……
実はそれには、無宗教国と言われているフランスの、キリスト教と切っても切れない絆が背景にあるのです。
『マルディ・グラ』は、毎年イースター(復活祭)の日程によって変わるキリスト教のお祭りで、2月2日のキリスト奉献の祝日(または聖燭祭)の後に来ます。
「キリスト奉献の祝日」とは、新約聖書のルカによる福音書第2章の22節から38節によると、幼子イエスが聖母マリアと父ヨセフによって神殿に連れて来られた出来事を祝福したお祭りのことを言います。
イエスの幼少期を語った珍しい記憶です。
美術作品の例
美術では、絵画の主題によく採り上げらます。
一つ例を挙げてみましょう。
17世紀のフランス人画家、シモン・ヴーエ(1590~1649)による晩年の作品≪キリストの神殿奉献≫(ルーブル美術館蔵)。
横2,5メートル、縦3,9メートルという大作ですが、エルサレムの老シメオンが神殿でイエスを救い主であることを宣言し、後に降りかかる救世主としての受難を予言する場面が描かれています。
明るい色調や背景の荘厳な建築はキリスト奉献の祝日をドラマチックに演出すると共に、わが子の運命を悲しむ聖母マリアの悲しみを一層引き立てています。
謝肉の火曜日
さて、このキリスト奉献の祝日が終わらないことには『マルディ・グラ』はやってきません。
キリスト教の伝統では、復活祭前の40日におよぶ断食前に脂っこいものを食べることが出来る最後の日ということになっています。
『マルディ・グラ』の『グラ』はフランス語で脂身という意味。『マルディ』は火曜日。
つまり、断食初日が水曜日ということを受けて、その前日の火曜日なら脂身を好きなだけ食べることが許されるという訳です。
今日、宗教的な意味はほとんど薄れてしまっているばかりでなく肉もいつしかクレープ等のお菓子に代わっていますが、この時期にそれらを食べるという習慣だけは根強く残っています。
『マルディ・グラ』のお菓子とカーニバル
『マルディ・グラ』を代表するお菓子と言えばやはりクレープです。
他にもワッフルやドーナツといった美味しい強者がいる中、どうしてクレープなのかというと、その丸い形に答えがあります。
丸は太陽を表しています。
そこから太陽の再現、つまり光が地上に戻るという意味が付けられました。
暗い冬から明るい春へと徐々に移行していく、暖かさを待ち望む人々が考えたこの季節ならではのアイディアなのですね!
『マルディ・グラ』の最後を締めくくるのはカーニバル!
復活祭前に春の訪れを告げるイベントで、謝肉祭とも呼ばれています。
フランスのカーニバルといえばニースのものを思い出す方が多いのではないでしょうか?
いえいえ、実は首都パリでもしっかり開催されているのです。
19年目を迎える2016年の開催日は2月7日。
テーマは『水辺のファンタスティックな世界』。
参加者は水兵や海賊など、水にちなんだ衣装を身にまとっていたのですが、見学する側も思い思いのコスプレでカーニバルを楽しんでいました!
13時半頃にスタートを切ったカーニバルは30分も経たないうちに大盛り上がり。
広場はいつのまにか人で溢れ、車道と歩道の区別もつかない程の大混雑な状態に……
当然バスや車は人に紛れて立ち往生していました。
各集団が一通り演奏を披露した後は踊りながら(もちろん演奏も)、20区のガンベッタ広場からおよそ4時間かけてレピュブリック広場まで移動します。
この日は天気に恵まれてほんのり暖かく、春の訪れを告げるにふさわしい、カーニバル日和だったのでした!
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