3,833 views

どこからどこまでがバンリュー(郊外)なの?

どこからどこまでがバンリュー(郊外)なの?

前回投稿した記事は、バンリューと呼ばれるパリ郊外に住むことで、首都の大気汚染問題は改善されるのかというものでした。

前回は、主にパリを取り巻く環境の現状とその対策について書きました。

今回はそれを受けてバンリューとはどのような所か、その魅力について語りたいと思います!

郊外広しと言えど、一体どこまでがバンリューなのでしょうか。

実は「コレ」といった定義はありません。

あくまで個人的な見解ですが、AからEの5つの線で成り立つRER(Réseau Express Régional地域急行鉄道網)のパリからゾーン5までの区域がそれに相当するのではないか、と思っています。

言い換えると電車で気軽に移動できる、パリから約1時間30分以内の範囲がバンリューということになります。

魅力的な3つの町を紹介します

3つの町を紹介します

ではバンリューにはどのような町があるのか、いくつかピックアップしてみたいと思います。

①ヴェルサイユ

パリから西へ約17km、人口8,5424人(2012年の統計)、ルイ十四世によって建設されたヴェルサイユ宮殿があるのは周知の通り。

毎週火曜日、金曜日、日曜日のAM7時からPM2時まで開かれている宮殿近くのマルシェも必見です。

言わずもがな、フランスが誇る観光地の一つで、RERのC線を使うとパリから40分くらいで着きます。

②ビエーブル

パリからRERのC線で南西に進むこと15km、人口およそ4432人(2012年の統計)という自然に囲まれた小さな町ビエーブルがあります。

あまり、日本人には馴染みのないビエーブルですが、19世紀末に来日し、明治初期の日本社会を諷刺画に残したことで有名なジョルジュ・ビゴー(1860~1927)が最期に住んだ町です。

また、フランスの版画家、オディロン・ルドン(1840~1916)が埋葬されている場所でもある、知る人ぞ知るの観光スポットです。

『レ・ミゼラブル』や『ノートルダム・ド・パリ』といった小説の著者ヴィクトール・ユゴー(1802~1885)もビエーブルに滞在していたことがあるようです。

③サン=モール・デ・フォセ

パリから南東に11km、人口7,4176人(2012年の統計)の町。

観光地というよりは住宅街が広がるこの地域の特徴は、何といっても全長約514kmのマルヌ川です。

セーヌ川の支流として知られており、パリに入る少し手前でこれと合流します。

マルヌ川の何て美しいこと!(大げさですか?いえ、本当そう思います)

パリのセーヌ川と比べると水の透明度が高いのは一目瞭然。

しかも、それを証明するかのように、水辺には首都では決して見ることが出来ない鴨や白鳥、蒼鷺などの鳥たちや魚、ヌートリアなどの生き物がたくさん生息しています。

週末はマルヌ川沿いを散策をする人が多く、サン=モール・デ・フォセが誇る憩いのスポットです。

グラン・パリ(大パリ)」計画

バンリューの魅力と問題点

バンリューの魅力とは詰まるところ何なのでしょうか。

上に挙げた3つの町の人口に注目してみましょう。

パリの人口約224,0621人(2012年の統計)に比べると、とても少ないことが分かります。

つまり、それだけ個人に割り当てることができるスペースが広いということです。

これがストレスの軽減へと良い方向に連鎖していくことは言うまでもありません。

それに人口が少ないわけですから、自家用車の量が減り、大気汚染の過剰な心配もなくなります。

実際にパリと比べると、バンリューでは空気が澄んでいます。

さらに物価が安いということも魅力の一つです。

例えばパリの中心で買うサンドイッチは、平均4.5ユーロのところ、バンリューでは平均3.7ユーロと約1ユーロ安く、しかも具がたっぷり詰まっているという嬉しい特典付きです。

ここで付け加えなくてはいけないのが、バンリュー内の格差です。

例に採り上げたヴェルサイユやビエーブル、サン=モール・デ・フォセは町として裕福なカテゴリーに属します。

しかし、パリからその北は同じ郊外でも雰囲気がかなり違うようで、環境問題に加え、治安問題も深刻化しています。

これに対しフランス政府は、2030年までにパリ市とバンリューを事実上一つの区域として管轄する「グラン・パリ(大パリ)」計画を打ち立てました。

その目的はパリ以外の地域の政治的・文化的活動を活性化させることで格差を無くし、均衡の取れた都市を作ること。

行き過ぎた大気汚染による環境問題もこれで改善されることを願うばかりです。

The following two tabs change content below.
HATTORI AYUMI
大好きな美術史の勉強をするため2010年に渡仏。現在パリ第4大学で19世紀後半から20世紀前半における大衆版画の研究をしています。慣れてきたようでなかなか慣れないフランス生活。アート以外にも、食やイベント、時事問題など興味の範囲を広げて記事を書いていけたらいいな、と思っています。