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フランスの環境問題

フランスの環境問題

花と光の都、パリ。

ですが、華やかに見える一方で、決して無視することができない大きな問題を抱えています。

それは環境問題。

特に大気に関しては、今年の3月、北京を越すほど汚染のレベルだったようで、巷の情報誌などではスモッグで覆われて見えなくなったエッフェル塔の写真が多く掲載されました。

フランスでは、日本のようにマスクを着ける人はほとんどいないため、こうした問題は普段なかなか気が付かないのですが・・・

それでも目がチクチクしたり喉が痛んだりと、何かしらの形で私たちの健康面に表れているようです。

環境問題に敏感なフランス。

首都が発する警報に、政府が黙っているわけがありません。

状況改善のために様々な対策が採られているわけですが、そのキーワードとして頻繁に登場するのが「バンリュー」と呼ばれるパリ郊外です。

今回はパリの環境問題の現状とあわせて、バンリューの魅力について、2回に亘って語りたいと思います!

パリでとられた対策

パリでとられた対策

パリは驚くほど自動車で溢れ返っています。

近年の大気汚染は車の排気ガスが原因なのだとか。

そこに注目したフランス環境省は、パリとその近郊でナンバープレートの数字が偶数か奇数かで利用できる日を分けるという、ユニークな対策をとりました。

また規制期間中、その地域の電車や地下鉄、バスなどの交通機関の利用が無料になったり、ベリブ(市内の貸し出し有料自転車)を無料でレンタルできたりと、敏速な措置が採られました。

しかし、いくら国が一丸となって取り組んだとしても、せいぜい一日、二日。

汚染率を警戒レベル以下まで引き下げることが出来たとしても、一時的です。

継続して行わないと意味がないのではないか、という意見もちらほら見られました。

そこでイル=ド=フランス交通連合(STIF)はこの9月から、新しい政策に踏み切りました。

それは、パリの中心部から同心円状に区切られた5つの区間(ゾーン)で定められていた交通機関の定期パスNAVIGOの料金を一ヶ月一律70ユーロにすること。日本円にすると約9500円です。

ゾーン1(パリ市内)から2までは今までと変わらないのですが、ゾーン1から一番遠いゾーン5は113,2ユーロと高額でした。

新しい政策の導入で、そこから移動する人のNAVIGO代は月43,2ユーロ(約6000円)もの節約になります!これは朗報!

バンリューに住むという選択肢

行動範囲や居住地域も、パリ市内からバンリューへと一気に選択肢が拡がりました。

ですが、この政策がどのように受け止められたのかを調べてみますと、排気ガス削減の効果が期待できるという最大メリットの一方で、様々なデメリットもあるようです。

主なデメリット:

①フランスはどのゾーンに住むかによって、その人の社会的身分が分かると言われています。

パリから最も離れたゾーン5は、あまり裕福な人が住む場所とは一般に認識されていません(もちろん例外もあります)。

そしてその地域に住む人は、パリまでの定期券は買うことがあまりないため、彼らにとって運賃のゾーン撤廃は結局意味がない。

②これまでSTIFがNAVIGOで得ていた一ヶ月分の収入が減ったことから、駅の老朽化、電車の遅れや本数の不足などの問題解決が先延ばしにされてしまう。

このように運賃のゾーン撤廃は賛否両論なのですが、私のように学生で、バンリューに住んでいて、市内に電車移動する人にとっては、やっぱりありがたい政策。

パリ市内も魅力的ですが、郊外もそれに負けず劣らず魅力的です。

次回はそこに注目してみたいと思います!

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HATTORI AYUMI
大好きな美術史の勉強をするため2010年に渡仏。現在パリ第4大学で19世紀後半から20世紀前半における大衆版画の研究をしています。慣れてきたようでなかなか慣れないフランス生活。アート以外にも、食やイベント、時事問題など興味の範囲を広げて記事を書いていけたらいいな、と思っています。