インドネシア人にとっては「不浄の左手」
私が勤務していたインドネシアの自動車部品工場での話です。
インドネシア人の工員の研修中に、生産ラインのベルトコンベアーの左から来る部品をわざわざ右手で取って作業し、終わったらまた右手で戻しているひとりの工員がいました。
そこにいた日本人アドバイザーが左手を使えばスムーズに効率的に作業できるだろうとアドバイスしたら、その工員は左手を使うと部品がけがれてしまうと答えたそうです。
後で日本人の間では笑い話になってしまいましたが、インドネシアの人にとっては全くもって真面目な話なのです。
俗に「不浄の左手」と言われ、人に物を渡すときなど左手で渡すと相手の気分を害すので、必ず右手を使わなければならないということは、インドネシアへ赴任する日本人に教えられる注意事項のひとつとなっています。
日本人には慣れていないことなので注意していてもつい左手で物を渡したりしてしましますが、インドネシアの人は書類を渡すときなどでも必ず右手を使い、さらに目上の人には敬意を込めて左手で右手の肘のあたりを支えて渡したりすることもあります。
イスラム教が関係する説
これは一説ではイスラム教徒の慣習と言われています。
イスラム教の教義にうるさい中東に住んでいたことのある人の話では、某日系企業のVIPが現地で食事に招待された際、お客さんだからとテーブルの前のお皿に盛ってある好みの料理を最初に取る光栄に預かったので、「不浄の左手」のことをつい忘れて左手でお皿から料理を取ってしまったところ、同席した現地の方々はそのお皿の料理を一切取らなかったというのです。
左手が直接料理に触れたわけではないのですが、左手を使ってしまったことでその料理そのものがけがされてしまったというのが理由で、こんな話を聞いてもかなり神経質になっていることがわかります。
一方で、イスラム教とは関係なく別の理由によるものだという人もいます。
インドネシアのトイレ事情
世界には人が用を足した後始末の際、水を使うか紙を使うかで大きく文化・地域が分かれます。
水を使う地域ではお尻を洗う際に、右手に日本のお風呂で使うような取手のついた桶に水を入れてお尻にかけ左手を使ってお尻を洗うので、宗教的な意味からではなく衛生的観点から左手を不浄としているというのです。
インドネシアの人に言わせれば紙で拭くなんて不潔の極みだということになるのです。
この水洗い方式は最近日本で普及してきているウォシュレットのルーツでもあり、ある意味理にかなったものです。
痔で悩んでいたある日本人が、インドネシアに滞在したのをきっかけにこの水洗い方式を真似してみたら、長患いの痔がきれいに治ったという話があります。
なかなか日本人には馴染まない習慣なので初めは戸惑いますが、街中のスーパーなどのトイレに行くとトイレットペーパーを置いてないことはよくあり、やむなく必要に迫られこの水洗いをするはめになるのですが、これが暑い国では結構ひんやりとして気持ちよくやめられなくなる日本人もいるのです。
従来の水桶方式から進歩した水洗いの器材で、水道管から細いパイプを洋式便器の後方に這わせ後ろから水を出すような簡易式ウォシュレットや、専用の手動式の小型シャワーがトイレに設置してあることもあり、日本人にも使いやすくなってきています。
みなさんも南国へ旅行する機会があって、そんなトイレに遭遇したときには、是非トライしてみてください。
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