オーストラリアへ旅立った日のこと
図らずもそれは私自身の誕生日だった。
満月の前夜に日本を出発し
まだ夜も明けぬケアンズ空港へ降り立った。
着陸に向け下降する飛行機から見えた
まん丸で
黄色くて
驚くほど明るい月が
オーストラリア ケアンズの海岸線を照らし
打ち寄せる波がキラキラと反射しているその光景。
そして自分の中で何かが高鳴っていくその感覚は、今でもはっきりと思い出すことができる。
28歳になってもなお、そのような感覚が私にはちゃんとあって、感じることができるのだという嬉しさと共に、ブリスベンへ向かう乗り継ぎの為、ケアンズ空港に着いたのだった。
7月、それはオーストラリアでは冬。
ケアンズは熱帯地域であり、日本の様な冬ではない。
飛行機から降りた瞬間、私に触れるその空気は、明らかに日本とは違うものだった。
国際線ターミナルから、国内線ターミナルへの移動。
チェックインまでは時間がある。
連絡通路から夜が明けていくのを眺めていた。
まるで私の新しい人生の幕開けの様な、そんな気分だった。
肌に触れる空気の、湿度、温度、匂い、私の耳に届く自然の音、南国の様な鳥たちのさえずり。
全く別世界に包まれている。
そして夜が明けていく。
これは旅行ではない。
私はこれから、この国で生活をしようとしている。
今までの海外旅行とも確実に違うその感覚は、半分以上の不安と、それに押しつぶされないようにと一生懸命に立ち上げている期待とで成り立っていた。
日本語は通じない。
語学学校に通うとは言え、いったい私はどんな人に出逢い、選択をしていくのだろうか。
目的はリメディアルマッサージを学ぶこと。
それだけでは勿体ないからワーキングホリデーにしよう。
そんなふうに決めた。
ブリスベン到着
オーストラリアで初めて買ったのは、びっくりする程高いペットボトルの水と、カフェで頼んだソイラテ。
オーダーもぎこちなくて、お金を出すのもぎこちなくて。
だけど、たったそれだけの事でも
できた。
という小さな充実感と達成感に満ち溢れていた。
大丈夫。
その言葉と共に、私は国内線のチェックインを済ませたのだった。
ブリスベン空港では、ピックアップを手配していた。
Aussieのドライバーが私の名前を書いた紙を持って立っていた。
たった1つのスーツケースで来た私。
30㎏のそのスーツケースには、これから最低1年は生活すると決めた私にとって精鋭ともいえる品が詰め込まれていた。
重くて申し訳ないので自分で車にも積み込むことをぎこちなく伝えたところ、みんな同じよ!大丈夫!と素敵な笑顔で手伝ってくれたドライバーさんの名前は緊張から覚えることができなかった。
というより聞き取れなかったというほうが正しい。
そう、ネイティブの話についていくことが難しいと、うすうす予想はしていた展開に身を置いていた。
聞き返す勇気も、その時は持ち合わせておらず、だまったまま静かにホームステイ先へと向かっていた。
幸いというべきか、同じピックアップにもう一人日本人がいて、その子とはこれから通う語学学校が同じだった。
オーストラリアに来た経緯を簡単に伝え合い、月曜日にまた学校でね。と、私が先にホームステイ先について、車を降りた。
そしてこの後、ホームステイ先の扉を開ける。
そこから、私の本当に初めてばかりの日々がスタートすることをまだまだ知らずに立っていた。
ワーホリ初日のことは今でも鮮明に思い出せる
本当に、初日のすべては鮮明に思い出すことができる。
というよりも、私の中に焼き付いているという表現のほうが正しいかもしれない。
それくらい、海外で生活するということは、今までの日常とは違う世界だった。
今は11ヶ月が経ち
当初の目的も果たしながら
人生がくるくるとゆっくりとだけど時に激しく
キラキラと
1年前の自分では思いもしなかった経験と共に充実している。
ただ、今言えるのはすべて自分次第だということ。
それは、受け身だけだったり、ただ外ばかりに変化を期待しているだけでは得られないものがたくさんあるということ。
それを得るための姿勢は、一歩の勇気と共に必然的に選択していけるようになるような気がする。
それはやはり日本ではないから、自分の全身の感覚をセンサーにして進み、吸収し、考え、悩み、涙し、笑う。
その積み重ねの結果、思いもしないところに辿り着き、そしてまた通過していくような気がしている。
そんな私のオーストラリアでの経験が誰かの何かのきっかけや、どこかの話のネタになればと、オーストラリアから発信していきます。
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