フランス留学
フランス留学と聞いて、どのようなものを思い浮かべますか?
日本の多くのメディアによって何かと採り上げられる国ですので、他国に比べて何を目的に留学するのか想像しやすいのではないでしょうか。
料理や舞踊、フラワーアレンジメント、ファッション、文学、哲学、芸術、など今私が思い付くだけでも本当にたくさんの分野があります。
それらのうち私は西洋美術史、とくに19、20世紀のフランスの版画をパリで専門的に勉強しています。
2015年で滞在6年目。
フランスのいい所も悪い所も何となく分かってきたこの頃合を見計らい、私が留学生活を通してフランスの何をどのような風に見て感じているのかを「書く」ことで、この国に関する情報をシェア・共有していけたらいいなと思っています。
どうぞよろしくお願いします!
今回は私の専門の紹介も少し兼ねて、「美術史の視点」とパリについて書いてみたいと思います。
芸術の都で学ぶ歴史
パリは芸術の都です。
古代ギリシャから19世紀まで、あらゆる領域の芸術作品を所蔵するルーブルや印象派作品で有名なオルセー、19世紀後半から現代までの作品が展示されているポンピドゥーセンターなど美術館、またエッフェル塔を始め、エトワール広場の凱旋門やノートルダム寺院に代表される歴史的建造物など、あらゆるジャンルの造形芸術が一箇所に集中している、宝箱のような街と言っても過言ではありません。
多くの人々がそれらの作り上げる景観や雰囲気に魅了され、フランス人であればそれがナショナル・アイデンティティを形成する意識へと繋がり、外国人であれば休暇の観光地候補にパリが踊り出る一つの理由へと繋がります。
美術史を学ぶ学生にとっては街全体が勉強のフィールドです。
何を勉強してるのかというと美術の「歴史」です。
何世紀も前の作品を目前にして、現在までの軌跡を古い文献や書簡、地図などからその「裏」に隠れている物語を出来るだけ中立の立場で歴史を作り上げていくというのが主な作業です。
歴史には絶対的なものはなく、私たちが教育制度の中で学ぶ日本史であれ世界史であれ、一つの教科書としてそれをまとめるとき、そこには編纂した人たちの意志が少なからず反映されています。
私も駆け出しの歴史研究者。
あまり大げさなことを言うのは憚れるのですが、パリに触れる際は常に「歴史」のことを念頭に置き、自分の考えはあくまで一つの見解、仮定であるという見方をするよう心がけています。
「美術史の視点」から見るパリ
そういうと美術史の学生って何だか窮屈で理屈っぽくて、あまりパリを楽しんでないのでは、と思われるかもしれません。
確かに、造形芸術を見て純粋に「すごい!」とか「きれい!」とか、そのような直感的な感性が鈍くなっていることは自分自身ひしひしと感じています。
ですが、そこは発想の転換。
例えば今まで素通りしていた建築物が、美術史の視点を通してみると実は歴史の中でとても意味のあるものだったということが分かったり、絵画に関して思わぬ逸話が隠されていたり・・・。
このように、芸術作品の表面に見えている部分だけに注目するのではなく、裏の歴史を探っていくとそれに対していつもとは異なる視点を持つことができ、普段の街中散策に新しい発見をもたらしてくれるという嬉しいメリットが美術史にはある、と考えれば、「美術史の視点」もあながち悪いものではないかな、と思います。
パリを散策する際はぜひぜひこの視点、試してみて下さい。
- フランスの伝統工芸と職人文化事情 - 2016年4月21日
- フランスの大学へ美術留学した私の6年間 - 2016年3月28日
- フランスのイベント『マルディ・グラ』 ―謝肉の火曜日― - 2016年2月24日
- フランス名物菓子「ガレット・デ・ロワ」の文化と作り方 - 2016年1月20日