インド行きへの経緯
こんにちは。
京都府立医科大学医学部医学科6年の東貴大と申します。
この度、インドに一ヶ月間留学してきました。
目的は臨床実習並びに医療視察です。
インドでの一ヶ月の医療留学で、医師を志す自分の目から多くの事を学び、感じることが出来たので、その経験をみなさんにシェアできればと思い、記事を書かせていただきました。
「インドの医療に興味はないか」
大学の留学報告会で、外部講師にきていたK大学教授の誘いに、二つ返事で「はい」と答えた時、インドという混沌とした国の医療にここまで影響されるとは思いもしなかったです。
私は将来産婦人科医を目指す、しがない医学部6年生です。
漠然と将来海外で国際協力や公衆衛生で社会に貢献していきたいと考えています。
生まれも育ちも日本ですが、米国と英国に留学した経験もあってか、英語は一応話せます。
今回のインド留学では、インドの文化と医療を全部欲張りたくて、2週間の大学病院での実習、2週間の南インド→北インドツアーを組みました。
その中でも、大学病院 (Christian Medical Collage)での実習の話をシェアしたいと思います。
医療の実態について
結論から言えば、留学で目にしたインド現地の医療は色んな意味で凄まじかったです。
3つの軸で日本と比較しながら話を進めていきますね。
専門用語も少し含んでいますが、軽く読んでもらえると幸いです。
1.患者さんの数
インドでの2週間の留学の間に、救急科と地域ケア科を主に実習しましたが、まず、患者さんの数が尋常じゃない!
待合室のようなものはなく、床にゴザを敷き家族全員で待つ人たち、子供に授乳するお母さんたち、挙句の果てには、待ち時間が長すぎて即席女子会をしている人たち…
もちろん、その中には軽症も重症の方も混ざっていて、どう診療していくか見当もつかない。
(日本で、混雑している病院でもゴザを敷いて寝て待つことはないですよね…?笑)
でも、うまくトリアージ(患者さんを重症かどうか先に判断し、重症の患者さんからみていくシステムのこと)され、数時間もすれば患者さんは診断を受け、帰っていくんです。
インドの医師は、日本の医師に負けないくらいハードワークでした。
2. インド特有の疾患とその多様性
インドは患者さんの数が多いだけじゃないんです!日本の救急科では絶対見られない、日本では信じられない、そんな光景が24時間繰り広げられています。
その一つに‘虫’があります。
非常に驚いた患者さんが、いらっしゃいます。
その患者さんは、来院前日まで元気で生来健康な20歳の女性で、意識を失って救急車で運ばれてきました。
その方は、来院の日の夕食までは元気に家事をしていたのですが、夕食時ボロボロとご飯をこぼすようになり、異変に気づいた家族が救急車を呼んだのですが、救急車到着までに意識を失ってしまったようです。
意識を失ったこと以外、異常所見はありませんでした。
Babinki反射陽性と人形の目現象陰性(共に脳はやられた時に異常になります)を認めました。
インド人医師はそこから、虫刺されによる意識障害を考え、実際耳の後ろに小さな虫刺されの痕を見つけました。
つまり、この20歳の女性はずーっと健康に生きていたのに、ある日突然耳の後ろを、目に見えないくらい小さな虫にかまれて意識を失ってしまったことになります。
そんなこと信じられますか?他にも、ご飯の中に小さな虫が入っていて、その虫が脳の中に巣を作ってしまい、てんかんという手や足が発作的に勝手に動いてしまう病気をもつ方が1日に何人も救急搬送されてくるのです。
日本にいれば、そんなことありえないですが、インドではごくごく日常の光景のようでした。
3.実は生活習慣病大国インド
インドといえば貧しい人が多く、満足に食事も摂れずガリガリに痩せているようなイメージを持つ方も多いと思います。
しかし、実はインドには糖尿病や高血圧をもつ患者さんがたくさんいます。
それは、太りやすい遺伝子を持っていることも一因かもしれませんが、大多数は栄養過多と栄養の偏りなんです。
インドといえばカレーがメインの食事だと思います。
貧しいが故に効率良く炭水化物を摂り、食べられる時に、お腹いっぱい食べる、そんな文化がインドには根付いているのです。
また、運動するくらいなら働いてお金を稼がなければならない人がほとんどです。
理由は違えど、生活習慣病と闘っていく必要があるのはインドも日本と同じです。
インドでも、カレーのご飯を別のものに替えたり運動を推進したり、いろいろな工夫をしていました。
留学で感じたこと
インドに留学して、現地の医療から感じたこと。
それは“インドのような国では、病気をいかに予防するか”が特に大切だということです。
つまり、衛生環境や、国民が自分の健康に対してどのような知識と考えを持っているかが非常に大切なんです。
でもこれって、インドだけではなく、日本でも同じだと思います。
日本でも、これからそういったことを考えていく必要がある、いや考えていかなくてはならないと思います。
ハーバード大学 公衆衛生学 イチロー・カワチ先生の著書「命の格差は止められるか」の中でもあるように、そうしたPublic Healthの考え方は、その責任を個人がもつのではなく、社会全体をターゲットにされているわけで、これからの日本の医療は考え方・捉え方でよりよくしていけるのではないかと考えています。
また、健康の基盤を作っていくことには医療だけでなく、教育・通信・交通・メディア多くの協力が必要です。
その中で、より良い社会を作る一人になれれば、と自分も感じています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
医学的な内容も含みましたが、私のインドへの医療留学の話を通して、すこしでもイメージを共有することができたでしょうか?
今回の記事で読者の方々が自分と家族の健康について、思いを馳せていただければ嬉しいです。
ご意見・ご感想等ありましたらt.azuma1018@gmail.comまでいただければ幸いです。


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