トリノで聖骸布の祭典に参加
今回の記事では、北イタリアの街トリノを訪れた際、キリストの聖骸布の祭典Santa sindoneに参加することができた体験をシェアします。
自由に旅する個人旅行は、旅の途中、何が舞い込んでくるかわかりません。
思いがけないプレゼントのような、出来事が突然降りてくることもあります。
時間に制約されず、融通がきく個人旅行では、ぜひそのチャンスには乗りましょう!
今回、そんなチャンスにトリノでも恵まれました。
トリノで開かれている、キリストの聖骸布の祭典Santa sindoneは5~7年に1度という滅多に参加できないイベントです。
そんな記念すべきイベントに参加できたのも個人旅行だからです。
祭典への参加はささいなきっかけでした。
「もしかしたら知っているかもしれないですが、今トリノでは聖骸布の祭典が開催されています。予約制ですが、本日夜空いているようですから、もしよかったら参加されてみては?5~7年に一度の祭典です」
トリノ近郊に住んでいる知人にメールしたところ、彼女からこんな返信がありました。
彼女は詳細記事のURLと申込先 電話番号をメールで送ってくれました。
これは行くべきでしょう!即決断です!
「イタリア語で電話申込みだ・・・。」少し緊張しながら電話をかけますが、アナウンスが流れるだけですぐ切れてしまいました。
その時、私はトリノで有名なサヴォイア家御用達だった、カフェでランチをしていました。
ウェイターに「聖骸布の祭典Santa sindoneに申込みしたいんだけどできなくて・・・」とつぶやくと、「祭典会場にはこのカフェから歩いて5分だよ。地図をあげるから、直接行って申し込むといいよ。」そう言ってお店から地図を持ってきてくれたのです。
なんて親切なウェイターさんなんでしょう!
「明日日本に帰国するから予約したいって言えば、すぐ入れてくれるさ!」
私はウェイターさんにお礼を言い、カフェを後にしました。
しかし、振り返るとこれはこれから始める困難への序章だったのです・・・
予約センターはどこ?
「予約はここじゃないよ、向こうに予約センターがあるから、そこで。」
教会を見つけホッとし、警護にあたる警察官に祭典申込みを話すと、こう言われてしまいました。
え?ここで予約できないの!?
後で分かるのですが、私が警察官に聞いた場所は祭典の出口だったのです。
でもその時は分からず、なぜ受付けてくれないの?!と思いながら言われた方向へ歩きました。
そして、トリノ王宮の前に立つボランティアの方へと予約センターを訪ねると、今度は「向こうだよ」と言われてしまいました。
また?と思いましたが、言われた方向へ歩き、王家の教会前にいたボランティアの方へ聞くことに。
あの人ならわかるはず。
”Scusi (すみません)”と話しかけると、その方は何を思ったのか、私が訪ねたいこととは全く関係ないことを一方的に話し出したのです。
”Aspetta(待ってください)”ボランティアの男性はハッとして「ああ、どうぞ。」予約センターの場所を聞くと、男性が話した内容とは全く関係なかったので、隣にいた男性がクスクス笑い出しました(笑)
そしてまたも「(予約センター)向こうだよ」
さすがに私も何度も向こうだよと言われているので、一体どこなのか問うと、予約センターまで案内してくれました。
この時は本当にすぐ近くの「向こう」でした。
やっと到着、予約センターは待っている人もあまりいなく、スムーズに予約完了。
「予約時間に教会へ直接行けばいいわよ」という係のお姉さんの言葉に一安心しました。
ところが・・・、これも違ったのです!しかし、その時はそうとは知らず、安心しきってホテルへ帰ったのでした。
部屋で休憩し、少し早めに教会へ向かいました。
再び教会へ到着、先程帰された出入口へ立ち、予約表を警察官へ見せると。。。
「今度こそ中に入れる」そう思っていた私に、警備の警察官は「ここじゃないよ。向こうだよ。」
え?入れない?向こうって何?
耳を疑い、「予約センターのお姉さんが教会へ直接いけばいいって言っていたんですよ」
「うん、でもここじゃないんだ。向こうへ行って受付して、最後にここに来るんだよ」
もう一度受付をする?では何のための予約?再び警察官に聞くも同じ返答。
また「向こう」へいくしかないようです・・・。
受付場所を聞くと、歩いて10分はゆうにかかる、トリノ王宮の大きな庭園内に受付があるそうです。
「最初からそこに集合と言って!」と思いながらも、予約時間に到着するため走って向かいました。
インフォメーションらしき受付の前には列をなしている人々で溢れていました。
こんなに沢山の人!
予約時間に間に合わないじゃない、と思うのはおそらく日本人の考え。
トリノでは違ったようです。
予約は教会へ入るためのきっかけで時間はあくまで目安のようでした。
列に並んでいる人は50~70代くらいと年齢層は高めでした。
公園内から、長い長い屋根付き通路に入り、延々と歩きました。
「手荷物チェックがこの先にあるから」整列係らしき人が叫んでいます。
ボランティアの人達も通路に立っています。
会場までのこの通路は思った以上に長く、本当に聖骸布を見れるのかしら?疑問が浮かびました。
通路は満員電車のような混雑ぶり。
「急がなくても大丈夫よ」人の列が途切れたところで足早に歩く私にボランティアの女性がそう言いました。
「でも間に合わないかも」という私に対し、「時間は関係ないわ。見れるから大丈夫よ」と笑顔。
やはり時間は目安だったようです。
ついに聖骸布と対面!
ようやく教会の会場入口に到着すると、いきなりボランティアの男性から”Aspettate un attimo”「ちょっと待ってください」と入口前でと縁られてしまいました。
説明はなくだた”Aspetta”と言うだけ。
何のために待たされているのかわからず、私は少しイライラ。
でもトリノの皆様はいたって平然。
トリノではいつものことなのですね、きっと。
“OK”しばらく待って、ようやく移動が許されました。
「この先にまだ何かあるのかしら?」作られた通路を歩いた先にその答えがありました。
実はこの待ち時間は聖骸布の実物を見る前に、大きなお部屋で聖骸布の説明ビデオを見せていたのです。
ここでようやく本物のSanta sindoneの手前に着きました。
長かった道のり!
説明ビデオは、記憶では6か国語の字幕で書かれていたでしょうか。
イタリア語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語。
みな静かにじっとビデオを見ていました。
確かにそのビデオがなければ、布に付着している血のあとが、体のどこの部分であるのかわからなかったでしょう。
さらに体の表と裏、特に顔にいたっては、目、鼻、口部分が分かりました。
キリストが存在していたこと。
実際に十字架に張り付けられ、布でその体が覆われていたこと。
これまではどこか遠く、物語のように感じていたことがビデオを通して現実の出来事として受け止めることができました。
ビデオが終わり、静かに部屋を出て移動するとそこはもう教会の礼拝堂でした。
薄暗い照明の中、2列に並びゆっくり聖骸布の前に立ちガラスケース内に展示されている布を見た途端、なぜか鳥肌がたったのです。
キリストのエネルギーでしょうか?
「これがあの聖骸布なんだ」ビデオで見るよりも、血痕は薄いですが肩、腕、足がどれなのかはわかります。
感慨深い瞬間でした。
聖骸布の前に立ち、見ることができた時間はわずか2、3分だったでしょうか。
それでも私には強烈な何かが自分に差し込んできたような不思議な時間でした。
見終わると静かに誰も物言わず、聖骸布を後にし、出口へと進みました。
教会を出ると、突然大粒の強い雨!空は明るいのに!まるでその場を洗いざらい綺麗に流すような雨でした。
約半日かかった、トリノでの聖骸布を見るための祭典への参加は、珍道中含め思い出深いSanta sindoneの日となりました。
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